「じっとしていられない」「気になるものにすぐ飛びついてしまう」「順番を待てない」。動きの多いお子さんを前にすると、保護者はつい自分の関わり方を責めてしまいがちです。けれど、こうした姿はわざとでも、しつけ不足でもありません。この記事では、多動が気になるときに家庭でできるやさしい関わりを、背景の理解からいっしょに見ていきます。
「落ち着きがない」は、しつけの問題ではありません
体を動かしたい、目に入ったものに反応してしまう、思いついたらすぐ行動する。こうした様子は、その子の「困った性格」ではなく、育ちの途中にあるお子さんによく見られる姿です。まずは「本人もコントロールしたいのにうまくいかない」という前提に立つと、関わりの糸口が見えてきます。
動き回ってしまう背景を知る
多動・不注意・衝動性が出やすい背景には、いくつかの要素が重なっています。
- 脳の働きの特性で、気持ちや行動のブレーキがまだ育っている途中であること
- 年齢的に、そもそもじっとしていられる時間が短いこと
- 音・光・人の動きなど、まわりの刺激が多くて気が散りやすいこと
どれか一つが原因、というより、その日の体調や環境でも出方が変わります。強く出る日があっても、お子さんの努力不足ではありません。

家庭でできる、やさしい関わり
「動かないように我慢させる」のではなく、「動いてよい形に整える」のが基本です。
動いてよい時間と場所をつくる
じっと座る前に、体を思いきり動かす時間を用意します。公園で走る、クッションでジャンプするなど、エネルギーを先に発散できると、その後は落ち着きやすくなります。
見通しと短い指示を伝える
「あと少しで終わりだよ」と先に見通しを示し、指示は一度に一つ、短い言葉で伝えます。長い説明よりも、「くつ、はこう」のような具体的なひと言が届きやすいです。
できたらすぐに認める
座れた、待てた、その瞬間に「待てたね」と声をかけます。あとでまとめてほめるより、できた直後の小さな声かけが次につながります。
まわりの刺激を減らす
食事や宿題のときは、テレビを消す、机の上のおもちゃを片づけるなど、目や耳に入る情報を減らすと集中しやすくなります。
安全対策も大切な関わりのひとつ
衝動的に動く時期は、思わぬケガや飛び出しが起きやすくなります。手をつなぐ、家具の角を保護する、道路や階段では大人が先回りするなど、叱る前に環境を安全に整えておくことが、お子さんも保護者も安心につながります。
やりがちだけれど逆効果になりやすいこと
※
次のような関わりは、良かれと思ってもかえって関係をこじらせやすいものです。
- 強い口調で叱り続ける(自信をなくし、行動は変わりにくい)
- 長い説明で言い聞かせる(途中で情報がこぼれてしまう)
- 「お兄ちゃんは」「よその子は」と比べる(比較は本人を追い詰めます)
うまくいかない日はあって当然です。できなかったことより、できたことに目を向ける関わりへ、少しずつ切り替えていきましょう。
園・学校、相談先とつながる
家庭だけで抱えこむ必要はありません。園や学校の先生と様子を共有し、家と集団の場で関わりをそろえると、お子さんも見通しを持ちやすくなります。
- 気になる様子や困っている場面を、日付とともにメモにまとめる
- 園・学校の先生に共有し、集団の場での様子も聞いてみる
- お住まいの自治体の発達相談窓口に問い合わせる
- 必要に応じて、児童発達支援や放課後等デイサービスなどの支援につなぐ
相談は「診断のため」だけのものではなく、日々の関わりのヒントを一緒に考えてもらう場でもあります。
保護者さまへ
動きの多いお子さんと過ごす毎日は、体力も気持ちもたくさん使います。ここまで工夫を重ねてこられたこと、その一つひとつが、すでにお子さんの安心につながっています。うまくいかない日があっても、あなたの関わりが足りないわけではありません。どうかご自身も労わりながら、頼れる先とつながっていってください。
本記事は一般的な情報をまとめたものです。診断は医療機関で行われ、現れ方や必要な支援は一人ひとり異なります。気になる場合は専門機関・自治体の窓口にご相談ください。